DATE 19.01.09
『A3!』2周年直前企画!
~夏組編コラム~
『A3!』2周年直前企画!ゲームギフトのお誕生日記事でお馴染み、フリーライター・たまおさん(@tamao_writer)による特別コラムをお届けします!
第二回目は夏組編!どうぞお楽しみください♪
※本記事には【メインシナリオ第一部クリア】【メインシナリオ第二部クリア】および一部のイベントのスクリーンショット・ネタバレがございます。お読みいただく際はご注意ください。
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2019年初頭、いよいよリリース二周年を迎える『A3!(エースリー)』。直前企画としてMANKAIカンパニーの劇団員たちと各組を語る本コラム、今回はフレッシュさあふれる“夏組”語りをお送りします。
皇天馬――太陽に向かって
新生MANKAIカンパニーで、春組に続き二つめに生まれたのが夏組です。高校生にして人気俳優の皇天馬くんは、劇団にとって初めての演技経験者として夏組に入団しました。彼は即戦力として活躍が期待されましたが、“オレ様”な態度で周りとぶつかり、リーダーとしてみんなをまとめていくことができませんでした。けれど彼は、いつだって誰かを傷つけたくて傷つけているわけではないし、誰にも言えない想いを抱え、ほんの少しだけ自分の気持ちに素直になれないだけだったのです。
初めての劇団、初めての馬鹿騒ぎ、初めての“トモダチ”。舞台に対する自分のトラウマを克服するためだけのつもりで飛び込んだ世界で、彼はたくさんの初めてを経験し、大きく成長していきます。
メインストーリー第一部第2幕(夏組旗揚げ公演『Water me!~我らが水を求めて~』より)
彼は実力派俳優と呼ばれながら、まだまだ上に行こうとしています。夢は大きく、願いは強く、そんな彼に引っ張られるようにして仲間たちも力を合わせていくのです。そうして初めてみんなで作り上げたのが、旗揚げ公演の『Water me!~我らが水を求めて~』でした。太陽にまっすぐ顔を向けて咲く向日葵のように、どこまでも高いところを目指し、みんなを連れて行こうとする天馬くんは、眩しいくらいにますます輝きを増していくように感じます。
瑠璃川 幸――誇り高く美しく
春組の旗揚げ公演で衣装係としてMANKAIカンパニーに関わり、スカウトされて夏組に入団した幸くん。中学生ながら衣装作りの腕は確かなもので、度胸もあり、舞台の裏でも上でも立派にその役目をこなしていました。そんな彼は夏組第二回公演『にぼしを巡る冒険』で早くも主演を務めることになるのですが、主演と座長と衣装作りの責任でプレッシャーに押しつぶされそうになり、その苦しみを誰にも打ち明けられずにいたのです。
彼はとても強い人です。しかしそれは何があっても決して折れないものではなく、誇りや信念が彼自身を支えているように感じられます。けれど人は、時には揺らいだりすることも当たり前にあるし、弱音を言わないのが強いわけではなく、弱さを知ることが強さになるのです。弱みを見せまいとして自分を追い詰めていた幸くんでしたが、準主演の一成くんの手助けによって、彼は言えなかった言葉を口にします。「助けて」と大声で叫べなくても、それがつぶやくように小さな声でも、ちゃんと耳を傾けて手を差し伸べてくれる仲間がいることは、ずっとひとりで戦ってきた彼にとってどれだけの支えになったのだろうと思います。
夏組第二回公演『にぼしを巡る冒険』より
瑠璃川幸という唯一無二の存在を輝かせる、彼の美学と揺るぎない価値観。かけがえのない仲間と固く結ばれた絆は、きっと彼をもっと強くしてくれるはず。その花は気高く美しく、誇り高く咲き続けるのでしょう。
斑鳩三角――完璧なさんかく△
三角くんは、いつのまにか劇団の寮に住み着いていたことをきっかけに夏組に入団することになりました。謎多き人物だった彼は、かつてのMANKAIカンパニーで脚本を書いていた斑鳩八角さんの孫であったことが後に明らかとなります。新生夏組で上演することになった第三回公演『抜錨!スカイ海賊団』は、亡くなった“じいちゃん”がお気に入りだった海賊もの。三角くんたっての希望もあり、彼が主演を務めることになりました。
自分を見捨てなかった唯一の存在だったという祖父亡きあと、三角くんは文字通りひとりぼっちになっていました。けれど“寂しい”や“悲しい”、そういう感情に名前を持たなかった彼は、ひょっとしたらずっと心に孤独を抱えながらも、それに気づいていなかったのかもしれません。みんなと一緒にすごすようになってたくさん笑って、嬉しいことがあって、そうして色とりどりの気持ちを知っていったのだと思います。
夏組第三回公演『抜錨!スカイ海賊団』より
祖父が残してくれた宝の地図を元にみんなで探して見つけた宝物は、彼が愛してやまない完璧なさんかくでした。じいちゃんが大好きだったお芝居、一緒にお芝居を作り上げる大好きなみんな――。暗闇を知るから光を知ると言われるように、夜は暗いから、星の光がよく見える。夜空のさんかくのお星様に祈りをささげる三角くんに、胸が熱くなる夏の夜でした。
向坂椋――いつか王子様に
少女漫画が大好きで、いつか自分も漫画の王子様みたいになりたいと夢見ていた椋くん。少し引っ込み思案なところのある彼でしたが、自分から勇気を出してMANKAIカンパニーの扉を叩き、ここにやってきたのでした。演劇など未経験だった彼は、最初のころは慣れない芝居にとても苦労していました。けれど旗揚げ公演ではモチーフとなった原典を読み込んで稽古に臨み、第二回公演では本人とは真逆のイメージの役柄に挑戦、第三回公演では、ついに準主演を務めることになったのです。
彼はふわふわして見えて、中身は大人顔負けの頼もしさがあるように感じます。誰かのSOSにいち早く気づき、そばに寄り添ってあげることができるのです。それはきっと、彼は感受性が豊かで人の心の機微に聡く、悲しい思いや悔しい思い、心の痛みを自分のことのように受け止める優しさがあるからなのかもしれません。
夏組第三回公演『抜錨!スカイ海賊団』より
第三回公演で椋くんは、主演を務めた三角くんのためにある行動を起こします。現実の自分はまだまだ非力な子供だけれど、舞台の上で演じるヘンリーならきっとお宝を手に入れるはずだと、苦境にめげずに立ち向かっていくのです。
多くの女の子が夢見る「いつか王子様が」現れるという願い。椋くんならきっと、「いつか誰より素敵な王子様に」なれるはず。そんな素敵な日がきっと、いつか訪れるのだろうと思います。
兵頭九門――サヨナラゲーム
MANKAIカンパニー二度目の夏、新たな仲間となったのが九門くんです。彼は秋組に所属している兄の十座くんに憧れ、当初は同じ秋組に入団を希望していました。けれど夏組の地方公演に同行し、コメディ劇の舞台裏で真摯に稽古や準備に励む劇団員たちを見て考えをあらため、みんなの助けを借りながら厳しい入団条件を乗り越え、彼らの一員となります。
つい最近まで野球部に所属していた九門くんが主演を務めることになったのが、夏組の第四回公演『初恋甲子園』です。弱小野球部が甲子園を目指す物語で彼が演じるのは、自身のポジションでもあったピッチャー。自分が野球を辞めることになってしまった経緯をなぞるようなストーリー。それを九門くんは、何度も挫けそうになりながらも演じきることできっと何かが変わると信じ、絶対に最後まで投げ続けると歯を食いしばって舞台に臨むのです。
メインストーリー第二部第6幕(夏組第四回公演『初恋甲子園』)より
もしかしたら九門くんはずっと、野球を続けられなかった自分を許せなかったのかもしれません。それは忘れることもできたかもしれないけれど、彼はそうしませんでした。周りが彼の後悔を忘れたとしても、自分との勝負に勝てなければ先に進めないことがあります。勝つために、どんなに苦しくても決して舞台というマウンドを降りようとしなかった九門くんだから、みんなが支え、エールを送り続けてくれたのだと思います。そうしてみんなと手にした勝利、彼にとっての忘れられない夏の思い出が、いつまでも消えないようにと願うのです。
三好一成――いま、一番大切なもの
人生のなかで、学生でいられる期間というのは意外と短いものです。でも、その後の長い道のりの方向性を決める重要な決断をしなければならない瞬間がくることもあります。夏組の第五回公演『SHI★NO★BI珍道中』で主演を務めた美術大学3年生の一成くんも、大切な仲間と芝居と将来について考えねばならない、大きな岐路に立たされたのでした。
いまではすごく“チャラい”イメージの一成くんですが、中学の頃はガリ勉で、実は高校デビューをしたのだと語っていました。でも、彼が本来は勉強することが好きだというのは、あまり意外には思えませんでした。なぜなら、勉強とは知らなかったことを知ることだから。なにごとにも好奇心旺盛だけれど、決していい加減にはものごとに向き合わない一成くんらしい気がしたからです。だからこそ、なにかを選べば別ななにかを諦めなければならない人生の選択は、彼にとって非常に悩ましいものだったのだろうと思います。
夏組第五回公演『SHI★NO★BI珍道中』より
彼は大好きな絵や芝居とじっくり真剣に向き合い、どうすべきかを考えました。そうして出した結論は、いま、この瞬間を大切にするということ。未来のことは誰にもわかりませんが、自分だけが自分の人生を切り開いていけるのです。一成くんならきっとこれからも、自分だけでなくみんなが笑顔でハッピーになれる道を選んでいけるのだろうなと思います。
夏組――弱さを乗り越えた先にあるもの
夏組は新生MANKAIカンパニーのなかでは最も平均年齢が若く、とてもフレッシュなイメージがあります。コメディタッチの芝居が得意というのも納得の元気のよさが伝わってくるのですが、実はみんな、中身は意外と大人というか、とてもしっかりしたメンバーが揃っているように感じます。
自分は何が好きで何が苦手かを人に流されずに判断することができる。集団のなかで自分はどうあるべきか、いま周りの人たちはどういう状況にあるかという、いわゆる“場を読む”ことに長けている――夏組はみんなわが道を行くタイプに見えて、いつでもきちんと周りを見ている。さらに、いざというときには腹をくくって勝負に挑み、その結果に責任を取る強さをも持ち合わせているように思います。
夏組のみんなはそれぞれ人には言わない“弱さ”を抱えていたけれど、同時に、仲間の弱さに気づくことのできる勘の良さもあります。誰かが立ち止まってしまったときに彼らは、大人たちのように言葉をたくさん知らなくても、少しくらい子供っぽいやりかたでも、そばで笑いかけてあげることができるのです。たとえば、みんなで花火をしたりしながら。
夏組のみんなが揃うと、一緒になってふざけあったり、なにかに夢中になって遊んだりしている姿をよく見ます。彼らは第2幕での合宿以来、毎年恒例で花火をするのですが、夏の夜空の下に響く元気な声や、色とりどりの光に照らされる笑顔が、なんだかいつも、すぐそばにいるかのように鮮やかに目に浮かぶ気がするのです。
楽しいときには力いっぱいみんなで笑って、喧嘩をしたら周りがびっくりするぐらい大声を出して、誰かが泣いていたら周りももらい泣きしてしまうくらい、全身で感情を表現する賑やかな夏の花たち。たくさんの想いや涙が栄養分となって、眩しい太陽の下、大輪の花をいっぱいに咲かせるのでしょう。
“弱さ”を知ることは、手に入れたいものやなりたい姿、目指しているものがあるからこそ、“足りない自分”に気づくということなのかもしれません。そして、それを乗り越えるきっかけは、決して一人でなくたっていいのだと思います。誰かに背中を押してもらったり、助けてもらったり、その背中に声を受けて “自分のなかの自分”に立ち向かっていく。そうやって弱さを乗り越えた先にあるものは、ひとつ成長した自分です。成長して得た力が今度はまた、誰かのためになっていくのだと思います。
大人になると、子供や学生だった日々は長い人生のなかでほんの一瞬だったな、と感じることがあります。それはまるで夏の夜の花火のように。けれど何度だって夏はやってくるし、来年も、またその次の夏も、みんなで一緒にきらきらした輝きを作り出していけばいい。涙を乗り越えて咲く光の花は、きっと太陽よりも眩しく、観る者の心に残り続けるのでしょう。
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今週は夏組コラムをお届けしました!次回、秋組編は【1月16日】更新予定!お楽しみに♪